君のための嘘
「あ、ありがとう……」


身体を起こされて、一息吐いた夏帆は言った。


いつもならば軽く「どうしたしまして」と言ってくれるラルフの言葉が無い。


ふっと顔を上げると、ラルフのブラウンの瞳と合う。


「……触れない様に努力したんだ……でも、君は僕の理性を狂わせる……ごめん、夏帆ちゃん」


ラルフは夏帆の腕を引き寄せ、距離を縮めた。


そして驚いている夏帆の唇に唇を重ねた。


「んっ」


熱い吐息と共に唇を塞がれて、夏帆は驚いたがそのキスは心地良くラルフを突き放そうと思わなかった。


それどころか、もっと……もっとキスをして欲しい……そう思った。


自分がラルフの理性を崩しているかと思うと嬉しい気持ちもあった。


< 266 / 521 >

この作品をシェア

pagetop