君のための嘘
しだいに先ほどよりも強い快感が押し寄せてくるのが分かった。


「あぁん……ラ……ルフっ!」


「っ……夏帆ちゃん……」


夏帆の身体が弓なりにしなり、絶頂を迎えたラルフは強く抱きしめた。


ふたりの呼吸が荒い。


呼吸が整うまで、夏帆は抱きしめられていた。


少ししてラルフは夏帆から離れた。


「ごめん、電話をかける約束を忘れていた。かけてくるよ」


ラルフは備え付けのバスローブを身に着け、寝室を出た。


和室に入ると、旅行バッグの中から震える手で薬の瓶を取り出す。


瓶から数錠の薬を出して口の中へ乱暴に放り込み呑み込んだ。


「くっ……」


ずるずると畳の上に座り込み、痛みが早く引くことを願った。


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