君のための嘘
明け方、ふと目を覚ましたラルフは心地良い温かさに気づいた。


そうだ……。


寄り添うように夏帆が眠っているのを見て、甘い時間を思い出した。


無防備で可愛い寝顔を見て、腕を回したくなる衝動を堪える。


期待させてはいけない。


僕の正体を知ったら……君は傷つくことになる。


君が傷つくと分かっていて僕は君に近づいた。


君と一緒に暮らし始め、この計画は僕のエゴだったのかもと後悔している。


君は養父母の元で幸せに暮らしていれば良かったのかもしれない。


複雑な立場に君はこれから耐えていけるのだろうか。


今なら間に合う。


夏帆ちゃんをロスに帰すんだ。


手続きが済めばすべて君の物になるのだから。


僕の側に居させる必要はない。


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