君のための嘘
ニットのワンピースを身に着け、髪も乾かし終えた夏帆は、昨晩食事をした部屋に行った。


ラルフはそこにもいなかった。


どこに行ったんだろう……。


不安になる。


コートを手にしてドアに向かった。その時、ドアが開きラルフが姿を見せた。


「ラルフ……」


「夏帆ちゃん、ごめんね。もう起きていたんだ」


時間は7時を少し回ったところだった。


「ラルフは……お散歩?」


ラルフが部屋の中に入ると、冷気を纏っているのかヒンヤリとした空気がわかる。


「ああ。目が覚めたら眠れなくなってね。もしかして探しに行こうとしていた?」


夏帆の手にしたコートを見て言う。


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