君のための嘘
「うん。どうしたのかなって……」


「ごめんね。もうすぐ朝食が運ばれてくるよ。手を洗ってくる」


ラルフはパウダールームにダウンジャケットを脱ぎながら行ってしまった。


ラルフの口調はいつものように柔らかいものの、そっけない感じだった。


夏帆はラルフの後姿を見て、困惑の表情を浮かべていた。


その後、朝食が運ばれ食べ始めたが会話が弾まない。


「夏帆ちゃん、食べ終わったらチェックアウトして東京に戻らないと行けなくなったんだ」


食べ終わる頃、ラルフが口を開いた。


「えっ……」


一瞬、何を言われたのか理解できず箸を止め、ラルフの顔を見る。


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