君のための嘘
「仕事でトラブルが発生したんだ。新宿に着いたらタクシーでマンションへ帰れるかな?」


「……うん。大丈夫だよ」


そうか、仕事で何かあったからラルフは浮かない表情だったんだ。


夏帆はそう解釈した。


「お仕事、心配だね?」


「あぁ。ちょっと時間がかかるかもしれない。遅くなっても先に休むように」


「はい」


すぐに東京に帰らなくてはならないのは残念だが、仕事ならば仕方ない。




東京へ戻るロマンスカーの中、行きとはあきらかに雰囲気が違う。


隣に座るラルフは小さなノートパソコンで仕事をしている。


夏帆は邪魔をしないように移りゆく景色を見ていた。


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