君のための嘘
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ラルフは新宿のタクシー乗り場まで送ってくれた。


夏帆を後部座席に座らせると、ラルフは運転手に自宅のマンション名を言う。


「ラルフ、ありがとう。トラブル、早く片付くといいね」


夏帆は無理に笑みを浮かべて言った。


笑みは引きつったようになっているかもしれない。


「ああ。ありがとう」


そう言うとラルフはタクシーを離れた。


タクシーが動き出しても夏帆はずっとラルフの姿を目で追っていた。


ラルフは次のタクシーに乗り込む所だった。



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