君のための嘘
第3章

ラルフの正体

******


ラルフは小さなスーツケースを持って行ってしまった。


柔らかい微笑みだけ残して……。


ラルフを送りだし、リビングに戻る夏帆の目から涙が溢れていた。


ラルフ……。


そっけなく行ってしまった事に、夏帆は傷ついていた。


******


夏帆はラルフのいない寂しさを紛らわせるようにアルバイトも時間を延長して働いた。


どうせマンションに戻ってもラルフはいない。


ひとりでマンションにいると、無性にラルフに会いたくなって気が変になりそうだった。

< 293 / 521 >

この作品をシェア

pagetop