君のための嘘
玄関のドアを開けて夏帆は瞳を輝かせた。


ラルフが帰っている!


「ラ――」


名前を呼ぼうとした夏帆はビジネスシューズが1足だけじゃないことに気づいて言葉を止めた。


同じようなビジネスシューズがもう1足隣に並んでいる。


まさかラルフじゃなくて泥棒?


夏帆は思わず息を潜めた。


ううん。この靴はラルフのものに間違いない。


だとしたらもう1足は誰?


夏帆は静かにリビングに入った。


リビングに会いたくて仕方なかったラルフの姿はない。


ラルフの姿を探す夏帆の耳に声が聞こえてきた。


夏帆は振り返ると、その声はラルフの自室からのようだ。


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