君のための嘘
処置を終えた医師とラルフは侑弥の待つリビングへ行った。


リビングへ入るなり、医師は後から来るラルフに向き直る。


「貴仁さん！　いつ結婚したんですか？　彼女はいったい誰なんです？」


主治医は寝室に掛けられていたパネルを見て聞きたいのを我慢していたのだ。


幸せそうなウェディング写真は紛れもなく貴仁本人と、自分が診察した女性だった。


もう一度、リビングをぐるりと見回す。


「いつ本家を出たんですか？　貴仁さんのような人がどうして人知れず結婚しているんですか？」


自分だけが知らないのだろうか？　そう医師は考えたが、父や祖父も知らないはず。


知っていれば話題にのぼっていただろうから。


「質問ばかりだな。僕が結婚したことは侑弥夫婦しか知らない。祖母には黙っていてくれ」


「なんですって！？」


医師は驚いて銀のフレームの奥の瞳が信じられない様にラルフを見つめている。



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