君のための嘘
「いや、祖母だけではない。誰にも他言しないように」


ラルフの声は冷淡に聞こえた。


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付いていなくて大丈夫か?と聞く侑弥にラルフは自嘲気味な笑みを浮かべた。


「もちろん、ひとりで大丈夫だよ。すべて僕が計画したんだ。話をしてロスに帰ってもらう」


「お前、本当にそれでいいのか? 彼女が好きなんだろう?」


「好き? そんなのでは表せないくらいに愛しているさ。愛しているからこそ、不幸せな目に合わせたくない」


ラルフは夏帆と愛し合った事を後悔していた。


箱根へ行くべきじゃなかった。


あんなシチュエーションで好きな女と一緒に居て、欲望を抑えられるわけがなかった。


浅はかな自分をあれから何度呪っただろう。



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