君のための嘘
「ラルフ……」


「……大丈夫だから、帰っていいよ。美由紀が待っているだろう? 明日は本家に新年の挨拶だな」


侑弥の父親は霧生ホールディングスの筆頭弁護士。


侑弥はなりたての司法書士だ。


毎年、新年には侑弥の両親も本家に挨拶に行くのだ。


侑弥は心配そうな、浮かない顔で帰って行った。


侑弥が帰ると、ラルフは夏帆の眠る自室へ行った。


夏帆はまだ眠っていた。


額に触れると点滴のおかげで、先ほどよりかは熱さが取れているようだ。


ベッドの端にラルフは腰を落とし、眠る夏帆を見つめた。



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