君のための嘘
さて……何と言おうか……。


世間知らずだから納得するはず。


夏帆ちゃんを傷つけたくなかったが、傷つけてしまうだろう。


僕を嫌いになればいい。


君は僕を憎み、ロスに帰るんだ……。





点滴が終わり、針を腕から抜くと夏帆の瞼がゆっくり開いた。


ラルフと目と目が合うと、ハッとした様に目を大きくさせ上半身を起こした。


身体を起こすと、眩暈に襲われ夏帆の手が自然と額を抑える。


「過労だそうだ。いったいたった数日でどうしてこんな風になってしまったんだ?」


自分のせいなのだろうとは分かっているが、ラルフはきつく言った。


何の感情も込められていないラルフの瞳に夏帆の胸は痛んだ。


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