君のための嘘
ずっと会いたかったのに……ラルフは違うよう……。


「……奥さんと浮気していたのに、旦那さんの侑弥さんと仲がいいんですね?」


「美由紀と浮気はしていない。あれは君を籍に入れる為に吐いた嘘だ」


「う……嘘……?」


夏帆はあ然となった。


「君と結婚すれば霧生家の財産をすべて相続できる約束でね。ああでも言わなかったら君はそうしなかっただろう?」


「すべてが……嘘……?」


夏帆の頭は混乱していた。


「君を籍に入れるのに、やきもきさせられたよ。勝手に仕事を見つけて自立しようとしているし。君が働き、自由になる金が手に入る前に、籍を入れたかったんだ。霧生家に行けって言ったのも、行きたくない君は藁にもすがる思いで僕との結婚を選択する……そう思ったからだ」


「……」


夏帆はこれ以上聞きたくなくて耳を塞ぎたかった。


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