君のための嘘
「そうですか。気を付けて行ってらっしゃいませ」


コンシェルジュの男性は深く頭を下げて夏帆を送り出した。


******


イタリアの有名ブランドのスーツに身を包んだラルフは本家の門を通り過ぎた。


玄関まで車で100メートルほどあり、道路の両脇には日本とイギリスの庭園を混ぜたような景色が広がる。


ここは都心から少し外れた場所にある霧生ホールディングス社の会長が住む邸宅。


祖父は前立腺がんの為に入院中で、今は祖母が使用人たちと暮している。


2ヶ月前までラルフはここに住んでいた。





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