君のための嘘
邸宅の横のスペースには高級車が並んでいた。


すべて祖母に新年の挨拶に来た重役たちだろう。


ラルフは車番の手を煩わさないよう、邸宅の前に停めるのではなく、自らその高級外車の横に停めた。


車から降りると車番の中年の男性は小走りに近づいてきた。


「貴仁ぼっちゃま。私がお停めしましたのに」


ラルフが幼い頃からいる男性で、来客のない時は屋敷を管理している。


いわば執事のような仕事だ。


「田中、これくらい訳ない事だ。客はあと何人くらい?」


「6人ほどでございますが、午後も増えるかと」


「毎年の事だから仕方ないね」


ラルフは歩きながら、親戚のおじのような田中に言った。


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