君のための嘘
「なんてお綺麗な娘さんなのでしょう」


「孫の恵梨奈です。大学を今年卒業しますので、ぜひ貴仁君に合わせたいと思いまして連れて来たんですよ」


ラルフは冷ややかな視線で、ピンク系のあでやかな振袖を着た女性を見た。


見られていることを意識してか、恵梨奈の頬がピンク色に染まる。


「まあ! 貴仁さんも仕事ばかりで、浮いた話が一つもございませんの。恵梨奈さんのような美しい人なら大歓迎ですわ」


飯野物産と言えば、霧生ホールディングス社よりは規模は小さくなるが、確かな業績を上げている商社だ。


お互いの孫が結婚すれば、両社の有益になる事、間違いないだろう。


「貴仁さん、わたくしの代わりに恵梨奈さんを庭へ案内して差し上げて」


わたくしの代わりと言われたら、案内せざるを得ないだろう。


「……わかりました。恵梨奈さん、外は寒いのでファーを巻いた方がいいですよ」


ラルフは恵梨奈と共に玄関に向かった。


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