君のための嘘
スーツケースや服が無くなっていたのだ。


あるのは自分がプレゼントした物のみ、それらは丁寧にクローゼットの棚に置かれていた。


それを目にしたラルフは夏帆の部屋を出てリビングやダイニングテーブルを目で追った。


何か書き置きのようなものがないか探した。


しかし何も残されていなかった。


「くそっ! これでは足取りがつかめないじゃないか!」


ひとりでロスに帰れるわけがない。


最初に渡した金はロスに帰れるほど残っていないだろう。


アルバイト代を足しても無理だとラルフは考えた。


探す当てはなかったが、じっとしてはいられない。


ラルフはコートをひるがえし部屋を出ると1階のロビーに向かった。


コンシェルジュが夏帆を見たか確認したかった。



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