君のための嘘
「そのようなものは霧生の力でどうにでもなります。そこまでしてあの娘にこだわる理由は? 妊娠でもしているのですか?」


これ以上、祖母の口から夏帆をさげすむ言葉をラルフは聞きたくなかった。


本当の事を話す時が来たのかもしれない……。


「彼女は……義父さんの娘だからです」


「貴仁さん!? 何を言っているのですか!? あの娘が健次さんの娘だなんてあるわけありません!」


祖母はショックを隠せず、顔色が青ざめてきていた。


「父さんは僕が物事を理解できるようになってから、血のつながらない妹がいることを話してくれました。彼女を探している途中、不幸にも事故で帰らぬ人になりましたが……父さんは、ずっと彼女を探していた。母親が病死で生きていない事が分かりましたが、孤児院で育てられていた彼女は見つからなかった」


「その女は風俗で働いていたんですよ? 健次さんの子供であるはずがありません!」


衝撃的な話を聞き、祖母はわなわなと身体を震わせている。



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