君のための嘘
「夏帆ちゃん! 気分は!? 頭をぶつけた? どこか痛い所はないかい?」


矢継ぎ早にラルフの口から夏帆を心配する言葉が出る。


夏帆はラルフの言葉は耳に入らなかった。


自分の母親が風俗嬢で、父が霧生家の人間だったことにショックを受けていた。


全身が震えて、何も言葉が出てこない。


「夏帆ちゃん……」


今の自分って……いったいなんなの?


私は……認められなくて捨てられたの?


「……やだっ! ここ……ここから……」


ここから出たい。


逃げ出したい。


夏帆はラルフを押しのけ、フラフラと立ち上がった。


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