君のための嘘
「夏帆ちゃん!」


ふらつく足元など気にせず、壁を伝わり出口をさぐる。


ラルフは夏帆の隣に行くと、肩を支えた。


「いやっ! さわらないでっ!」


夏帆はラルフの手を払いのけ、歩こうとする。


「ひとりで帰れないよ。ここに居たくないのなら大人しくするんだ」


今にも倒れそうな夏帆なのに、頑としてここから出て行こうと足を進めている。


「お待ちなさい! まだ話は終わっていません!」


祖母がふたりの背後から叫ぶ。


ラルフは立ち止まり、振り返った。


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