君のための嘘
「おばあ様! まだ孫を苦しめたいんですか!?」


冷たく言い放つと、背後でバタンと音がした。


「夏帆ちゃん!」


夏帆が意識を失い、倒れていた。


******


夏帆は昏々と眠っていた。


ラルフはマンションに夏帆を連れ帰っていた。


医師に診察されても目を覚まさず、物音にも瞼をピクリともさせずに眠っている。


ラルフはベッドのすぐ近くにイスを置き、夏帆を見守っていた。


何てことだ……事実を知らせて傷つけたくなかったのに……。


自分が必要とされず、母親にも拒絶されたと知ってどんなに辛いだろう……。


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