君のための嘘
今は何も考えずに眠っていた方がいいんだ。


ラルフは夏帆の頭上の点滴を見上げた。


まだ当分かかりそうなのを見て、ラルフは立ち上がった。


先ほどからポケットの携帯電話がうるさく振動していた。


リビングに行き、携帯電話をポケットから取り出すと、考えていた通り祖母からだ。


ラルフは携帯電話の電源を切ると、ソファの上に放り投げた。


そしてイスに座ると、俯き両手で顔を覆う。


おじい様達が義父と夏帆ちゃんのお母さんを認めていたら、こうして僕と君は合う事がなかった。


僕がぬくぬくと受けていた恩恵を今度は君に返したい。


そうしたい一心でしたことなのに、結果的には君を痛め傷つけてしまっている。


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