君のための嘘
「出て行って……」


夏帆の口からラルフを拒絶する言葉が出る。


「夏帆ちゃん」


「出て行って! 霧生家の人なんか見たくないっ!」


涙にぬれた目でラルフを睨みつけた夏帆は掛布団を頭の上までかける。


「……」


ラルフは夏帆に今はこれ以上興奮して欲しくなくて部屋を出て行った。


ドアが閉まる音がして、夏帆は急いで掛布団から顔を出した。


ラルフ……。


閉まったドアを見つめていると涙が枕を濡らす。


今の夏帆の頭は混乱していた。


自分が霧生家の人間かもしれず、……おばあ様には信じてもらえず……ううん、それ以前に私の母親が風俗嬢だったという事がショックでどうにかなってしまいそうだった。


そう言う職業に就いていたら、普通の人ならば血縁関係を疑うだろう。


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