君のための嘘
それにしても孤児院で暮らしていた時のことが夢に出てくるなんて……。


あれは……大切にしていた寄木細工の小さな箱を失くしてしまい探し回った時の事が夢に出た。


いくら探しても見つからず、母からもらったたった一つの宝物が無くなり数日間食事が食べられないほど落ち込んだ。


食事が出来て、寝る所もある。


小学校にも通わせてもらった。


優しい院長先生や先生たちもいた。


けれど、心は痛いほどいつもぬくもりを求めていた。


私を産んだ人は、私を捨てた。


院長先生から病気で数年後に亡くなったと教えられた時には悲しみは訪れなかった。


本当に私は霧生家の血を引いているの?


そうは思えない。


あんなに冷たい人がおばあ様だなんて思いたくない。


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