君のための嘘
「体力が無くなっているんだ」


枕を投げつけられず、苛立った夏帆の頬に少し赤みがさした。


「出て行って。何もいらないし、顔も見たくないっ」


夏帆の勢いに負けることなくラルフはベッドサイドのテーブルにトレーを置く。


「貴方の施しはもうたくさんなのっ!」


夏帆はラルフを傷つけたかった。


ラルフがこんな計画を立てなければ傷つくこともなかった。


「施しをしているわけじゃないよ。君は正当な霧生家の娘で、僕の妻だ」


「違うわ! 誰も納得していない! それに、私をロスに帰そうとしていたじゃないっ!」


「おばあ様に知られたくなかったんだ」


「……明日の飛行機を予約して! 日本なんて二度と来ない!」


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