君のための嘘
夏帆ちゃんは興奮しすぎて、唇から手に至るまで小刻みに震えていた。


ラルフはここまで夏帆を苦しめてしまい辛かった。


僕はなんてことをしたんだ……。


匿名で財産のすべてを送ればよかったんだ。


夏帆ちゃんの調査をするうちに、会いたくなった。


一度は彼女を見る為に、出張の帰りにロスに寄ったことがある。


飾り気のない君に惹かれた。


自分の周りには財産目当てで、着飾り近づいてくる女性ばかりだった。


この子といたら、気負わず楽に過ごせそうだと思った。


君に興味がわき、少しの間一緒に生活したかった。


今は夏帆ちゃんの瞳が痛くて、まっすぐ瞳を見られない気分だ。


しかし、今の夏帆ちゃんをひとり帰せない。


いや、まだ離れたくない。


僕の気持ちはどうなっているんだ、支離滅裂じゃないか。



< 362 / 521 >

この作品をシェア

pagetop