君のための嘘
「健次おじさんの子供だと認めたのか?」


「ほぼ認めたと言ってもいいと思う。だけど、問題は夏帆ちゃんなんだ」


「どうして? 大富豪の孫だと分かったんだ。普通なら喜ぶんじゃないのか?」


離婚弁護士事務所でアルバイトをしていたことのある侑弥は、女は金にがめついと思っていた。


女の欲を見せつけられた経験だった。


妻の美由紀だって、もしも離婚になれば分からない。


霧生家の孫だと分かれば、彼女だって天にも昇る気分じゃないのか?


「侑弥、夏帆ちゃんはそんな女じゃない。辛い過去を突きつけられて傷ついているんだ。一刻も早くロスに帰りたいと言っているよ」


ラルフの表情は苦々しいものになった。


「ラルフ、本当に帰せるのか?」


「僕は……本当に馬鹿な事をしたと反省しているよ。いたずらに夏帆ちゃんを傷つけただけだ……」


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