君のための嘘
侑弥はラルフの想いを考えるとやり切れない。


「帰すにしたって、誤解を解いてからにしろよ」


「一応は話してみるよ……」


本当に帰せるのかは自信が無い。


これから起こるであろう辛い日々に君が側でいてくれたら頑張れそうな気がする。


だけど、君を巻き込んではいけないんだ。


「お前ばかり辛い目にあっているな……」


侑弥はボソッと呟いた。


「……それが僕の運命なんだ」


何度も自分の背負った運命を恨んだ。


それも、夏帆ちゃんに会うまでは仕方ないで終わらせていた。


夏帆ちゃんと暮らすようになってからは……。


無理だ、希望を持ってはいけないんだ。


「そうだ、明日おじい様の見舞いに行ってこようと思うんだけど、 一時間ほど、夏帆ちゃんを頼んでいいかい?」


「ああ。もちろん」


侑弥は笑みを浮かべて快諾した。


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