君のための嘘
早く行って!


嫌いになろうとしてもこんなにも自分の胸を高鳴らせてしまうラルフ。


「……夏帆ちゃん」


ラルフの透明感のある声がして、夏帆の肩がピクリと動く。


「夏帆ちゃん、体調はどう?食べているようだから、少しは良くなっている?」


すぐ近くにいる気配。


夏帆は瞼を開けた。


ラルフの顔が見たい衝動にかられたのだ。


「夏帆ちゃん、気分が良ければ少し話をしようか?」


「……」


「……まだダメなんだね?ここに食事を置いておくよ」


そう言ってラルフはベッドに背を向けた。



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