君のための嘘
まだ夏帆ちゃんの心は固いままか……。


ラルフは夏帆の部屋を後にした。


ラルフの姿を見たい衝動に負けて、そっと寝返りを打った夏帆は部屋を出て行くラルフの後姿だけ見られた。


後ろ手にドアが閉められる。


もしもラルフが振り返り、ドアを閉めていたなら夏帆の泣きそうな顔が見られただろう。


******


翌日、侑弥がマンションに現れるとラルフは祖父の入院する病院へ向かった。


夏帆の話をするわけではない。


衰弱している祖父は、孫がいた事実を受け止められるか分からない。


話すかどうかの決断は祖母に任せると決めていた。


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