君のための嘘
「あの、早坂 ラルフさんはどこに?」


「早坂でございますか?少々お待ちくださいませ」


受付嬢はキーボードで何かを打ち、すぐに顔を上げた。


「申し訳ございません、そのようなものは居りませんが……」


そうだ……ラルフは霧生 貴仁だった。


「では、霧生 貴仁さんを」


その名前を言った瞬間、受付嬢がポカンと口を開けて驚いている。


「その者は我社の代表取締役専務の名前でございますが……?」


受付嬢は急に夏帆を見る目が胡散臭そうに見始めた。


「たぶん、そうです 霧生 貴仁さんはどこにいますか?」


「すみません アポイントメントのない方はお通しできないのですが」


「では、連絡を取ってください 岡本 夏帆が来ていると」


「わ、わかりました」


夏帆の気迫に押されたのか、受付嬢は受話器を取るとどこかへかけた。

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