君のための嘘

「ラルフは健次さんの意思を継いで、ずっと君を探していた　君を見つけだした直後、心臓病で余命宣告をされたんだ　ラルフは霧生家の本当の子供じゃないだろう？いつも自分の持っている財産は探している子のものだと考えていた　しかし、邪魔になるのはおばあ様だ　健次さんの子供だと分かれば、君は霧生の名に縛られてしまうとラルフは懸念したんだ　要は、岡本家から君を霧生家の養女に入れ、政略結婚をさせられてしまう　自由を奪われるのは辛い幼少時代を過ごした君にあまりにもひどい仕打ちだと思っていたんだ」


夏帆の頭は混乱していた。


侑弥の言葉の半分も頭に入っていないだろう。


「君をラルフの籍に入れてしまえば、財産を相続させる手続きが水面下で出来る　妻が相続するのなら相続税が軽減されるしね　誤算だったのは……ラルフは君を愛してしまった事だ　いや、日本に呼び寄せる前からラルフは君を気に入っていたようだった　常に君の事を気にかけていた」