君のための嘘
そんな訳があったなんて……。


夏帆の目から大粒の涙が溢れ、コートを濡らしていく。


「この話を聞いたことは、言わないでくれないか?彼は君にだけは知られたくないと思っている ラルフの心臓を乱さないようにするには君が帰るのが一番いい……明日のロスの便を取った 詳細はラルフに聞いてくれ 立って?マンションまで送るよ」


「……い、いいえ ひとりで帰れます 先に行ってください」


夏帆はひとりになって考えたかった。


侑弥はベンチに座り俯く夏帆を心配そうな顔で見てから立ち去った。


ラルフがあと2年も生きられない?


そんなのだめっ!


私はラルフが苦しんでいる時も、被害者ぶって自分の事しか考えられなかった。


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