君のための嘘
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真っ暗なリビングルームにパッと明かりが点いた。


夏帆はその眩しさに我に返り、顔を上げた。


「夏帆ちゃん、明かりも点けないでどうしたんだい?」


ラルフだった。


目と目が合うと、ラルフは片方の眉を上げて近づいてきた。


「夏帆ちゃん!なぜ泣いているんだい!?何かあったの?」


夏帆の隣に座ったラルフはポケットからハンカチを取り出し無意識に涙を拭ってやる。


「わた……しっ……」


ラルフの顔を見ると、また涙が溢れ出てくる。


どうしよう……言葉にならない……。


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