君のための嘘
トントン


おろおろと部屋の中を歩き回っていると、静かにドアがノックされた。


夏帆はビクッとなり、足を止める。


「夏帆ちゃん?言えなければ何も言わないでいいよ でも……話したくなったら、いつでもいいからおいで?……僕たちは明日でお別れだ 明日、9時にここを出るよ」


その言葉に胸がズキッと痛んだ。


明日……私はロスへ帰る飛行機に乗る……。


本当にこのままラルフを置いて帰ってしまっていいの?


ロスへ帰るのはラルフが望んでいる事……。


でも……それは、私の意思じゃないっ。


夏帆はドアを開けて、ラルフを追った。


リビングルームは暗くなっており、夏帆はラルフの自室の方を見た。


ピッタリとドアは閉ざされており、行くのが躊躇われる。


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