君のための嘘
「……時間はかかると思うけれど……理解するように努力する……」


夏帆の出来る限りの譲歩。


それはラルフの為。


「何があったのか、話してくれるかい?」


優しく聞かれ、今なら話せる。そう思った。


「……ラルフ……心臓病のことを――」


「夏帆ちゃん!?どうしてそれを!?」


夏帆を抱きしめていたラルフの手が離れ、驚愕した顔で見つめる。


「侑弥だな!?何を聞いたんだ!?」


初めてラルフが本気で怒った顔を夏帆は見た。


「ラルフ、落ち着いて……」


「君にだけは知られたくなかったのに、侑弥のやつ……」


頭に両手をやり、ガクッとベッドに沈む。


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