君のための嘘
ベッドに座ったまま、頭に両手をやり、ラルフは動かなかった。


夏帆は溢れ出てくる涙を止められずに、黙ったままじっとラルフを見つめていた。


ラルフ……。


「お願い……侑弥さんを怒らないで……」


ラルフは大きく息を吸い、顔を上げた。


その顔は怒っているように見えないが、どこか冷たい印象を受ける。


いつもは暖かく見えるブラウンの瞳。


今の瞳は感情をすべて隠している瞳。


こんな表情も出来るんだ……。


何を考えているか読めないラルフの表情を見て、夏帆は思った。


やっぱり霧生家でラルフは苦労していたのかもしれない。


自分の感情を押し殺し、バリアをはったような雰囲気を纏っている。


初めて会った時、こんな風な雰囲気だったら絶対に付いて行かなかっただろう。


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