君のための嘘
「……ラルフ――」
「家に戻ったらにしよう」


妊娠して嬉しいはずなのに、夏帆の気分は落ち込んでいた。


******


マンションの玄関に入ると、先に入ったラルフの背中に、夏帆は抱き付いた。


「夏帆ちゃん……?」


「私……ラルフが何を考えているかわかるの……」


ラルフは夏帆の手を、自分から優しく引き離すと、振り返る。


「夏帆ちゃんの考えている通りだよ 明日は僕と医師、侑弥で行くよ 夏帆ちゃんは居残りだ」


「いやっ!一緒に行くっ!」


夏帆は大きくかぶりを振る。


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