君のための嘘
「もっとしっかり触れても大丈夫だよ？あ、こうすれば触りやすくなるから」


向き合っていると、触りづらい。


夏帆はくるっとラルフに背を向けた格好になり、腰に置かれたラルフの手を自分の下腹部にピタッと置いた。


ラルフの手の熱がパジャマを通して感じる。


「……ここに赤ん坊がいるなんて不思議だね」


「ん……私とラルフの赤ちゃん……」


言葉を交わすと、胸にしまっていた悲しみが開いてしまい、夏帆は嗚咽を堪える。


夏帆の肩が小刻みに揺れているのを見て、ラルフは堪らなくなった。


不安を取り除いてやりたい。


堪える嗚咽を、とうとう我慢できなくなり押し殺したような声が夏帆から洩れる。


ラルフは夏帆の腰に手をかけ自分の体に密着させた。


< 493 / 521 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop