君のための嘘
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翌朝、ラルフを見送るために、祖母がマンションにやって来た。


夏帆の妊娠をラルフが話すと、祖母は涙を流して喜んだ。


長年連れ添った夫を亡くし、ラルフまでアメリカで治療となると、落ち込む気持ちは否めない。


最近は食欲もなく、気力も前ほどなくなったのだ。


しかし、夏帆の妊娠に祖母はぱあっと顔を明るくさせ、目に涙を浮かべ喜ぶ。


「おばあ様、夏帆ちゃんを頼みます くれぐれも無理はさせないようにしてください」


昨晩、夏帆は祖母の家で暮らすと決めた。


残す夏帆と祖母をラルフは心配していたからだ。


その事を話すと、祖母も喜んで大賛成した。


「もちろんですとも 大事に面倒を見ますよ うちには面倒を見てくれる者がたくさんいますから」


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