君のための嘘
出来出来上がってみると、目玉焼きは焦げ、尚且つ黄身は白身と混じり、ベーコンもゴムの様に固く焼いてしまっている。


唯一、グリーンサラダが美味しそうに見えるのはただ切って盛り付けただけだから。


出来上がったお料理を見て、夏帆は深いため息を吐いた。


ラルフさんが起きて来ないうちに、勿体ないけれど捨てよう……。


使うまではピカピカのシンクの中も、使ったフライパンやお皿、野菜の切れカスでひどいありさまだ。


お皿を持って、ゴミ箱に向かった背後でラルフの声がした。


「夏帆さん、朝食を作ってくれたんですね 嬉しいな」


その声にドキッとしてゴミ箱を開けた手が止まる。


持っているお皿を身体で隠すように顔だけ振り向くと、端正な美形の顔をニコニコさせたラルフがいた。



< 55 / 521 >

この作品をシェア

pagetop