君のための嘘
大柄の男性の背に隠れるようにして進み、到着ロビーに自動ドアを抜けるとこっそり辺りを見廻した。


夏帆の目に『岡本 夏帆様』と書かれたボードが飛び込んできた。


名前のボードを持つ者の他に2人、黒っぽいスーツを着た男性が立っている。夏帆を迎えに来たのは3人らしい。


彼らは出てくる旅行客らをじっと見ていた。


夏帆は彼らを避けるようにして、ツアー客の家族のような立ち位置で歩いた。


少しだけ振り返り、彼らを見ると自分に気づいた気配はなくホッと肩を撫で下ろした。


到着ロビーから外に出ると、寒さにブルッと震えが走る。


ロスとここでは気温差がだいぶある。


向こうでは半袖に薄いセーターで11月でも過ごせるのだが、日本はコートが必要だ。コートを必要としない生活だったせいで、今着ているのはネイビーブルーのロングカーディガン。それだけでは寒かった。


スーツケースの中に暖かくなる服を入れたか考えながら、見つけたタクシー乗り場へ向かう。


なかなか出てこない自分を不審に思った迎え人が、追いかけてきていないか確かめる為にもう一度振り返る。


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