君のための嘘
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食べ終わったラルフはスーツに着替えて部屋から出て来た。


「夏帆ちゃん、いない間に出て行こうと思っていないよね?」


玄関へ向かうラルフは、足を止め後ろから付いてくる夏帆に聞いた。


「お、思っていないです……」


本当に思っていない。


このほんわかと幸せな気分をまだ続けていたくなったからだ。


「良かった」


ラルフの顔に爽やかな笑みが浮かぶ。


「今日は、少し外に出てみようかなって」


「そうだね、気分転換に散歩したらいいよ お昼はどこかで食べるといい ただし迷子になったら困るからこの近辺にするんだよ あ、そうだ 僕の番号を教えておこう」


ラルフは胸ポケットから名刺入れを取り出すと、一枚抜き出し夏帆に渡した。



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