君のための嘘
男性の言うとおり、やはりメガネは壊れていた。片方の耳にかける部分が外れて壊れている。レンズも少し傷がついてしまっていた。これでは役に立ちそうにない。


夏帆はやるせない気持ちでメガネをかけると、縁を持ってぶつかった相手を見た。


見た瞬間、夏帆は絶句した。それは口も聞けないほどに。


目の前の彼はあまりに綺麗で、女の人かと間違えそうなほど美しい顔立ちをしていた。


女の自分が恥ずかしくなるくらいだ。


彼はすらっと背が高く、ベージュのトレンチコートを着ており、その下にはスーツ、深緑のネクタイが見える。


女性っぽいきれいな顔立ちなのに、服装はどう見ても男性。


もちろん、声も低すぎない素敵な低音なのだが。


「それでは使い物になりませんね?」


「え? いいえ 大丈夫です」


彼と目が合うたびに頬が熱くなっていくのが分かる。


気温は震えるくらい寒いのに。


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