はるぞら。
「が、あ、う、っ」
さっきから何か声が聞こえるなぁと思ったら、踏まれる度にもれでる自分の声だった。
単発的な音が口から不定期に飛び出ている。
声、抑えてるつもりなんだけどなぁ。
「 」
お母さんが言ってる。何を?
わかんない。
耳と頭がぐわんぐわんして、よく聞き取れない。
ただ、お前が駄目なんだって。
お前がいけないんだって。
私をすごい責めているのは、わかる。
私は馬鹿だけど、それぐらいは分かるよ。
昔々から、言われ続けているから。
「 」
「ぅ――はッ、 、」
こんしんの一撃が入った。
頭に足がめり込むのが、痛覚をつたって身に染みる。それはもう文字通りに。
頭が白んで目の前がチカチカする。
慌てて口を大きく開けて酸素を取り込もうとした、ら、
「ぁ――が、っはぁッ」
お母さんの爪先がみぞおちにクリティカルヒットして、咳き込む。んだけど、元から体内に酸素がなくて、もだえて苦しむ。
咳き込むことも酸素を取り入れることもできなくて口をパクパク魚みたいに開閉するという、たいへん無様な格好を母親の前に(下に?)さらしてしまった。
それでも、お母さんはまだまだ満足できなかったらしい。
にじむ視界に何かが横切るのが見えた。
その瞬間に、右足のスネに凄まじい激痛が走った。
骨、折れてはないと思うけど。大層な痣ができちゃっただろうなぁ「 づああッ」
痣思い(物思いの変化形)にふけっていたら、頭かち割られたかと思う激痛が再来してきた。
ていうか、これ、頭壊れちゃったんじゃないか。大丈夫なのか。
こんな、げきつ、「ううぅゔゔうう」う。
泣き喚きたくなるのを、必死に歯の奥に押し殺す。
まぁもう泣いちゃってるんだけど。
お母さんは一先ず落ち着いたみたいだ。
違う部屋に消えていった。
指に力を込めて、倒れた重い体を起き上がらせる。
乱れた呼吸が落ち着くまで、しばらく壁を見つめていよう。
涙が切れた口の端について、染みる。
頭も足もお腹も、もの凄く、痛いはずなのに。
どうしてか一番軽いはずのそこが、
一番痛かった。