君の、瞳に。【短編】
不思議少年
初めて出会った日。
それは、台風の日だった。
「…何してんですか?」
そう、初めて声をかけたのはあたしの方から。
少しショボい小さな公園。
そこにフードをかぶって丸まってる男……いや、同い年くらいの少年がいた。
「……」
「あの…今日、台風ですよ…?」
「涙」
「…は?」
「どうして、泣いてるの?」
そう言われて、グイッと自分の涙を拭き取った。
「…な、泣いてません。雨です…っ」
「へえ」
──その瞬間だった。
「っ」
何故かグイッと腕を引っ張られ、ペロッと頬を舐められた。
「……」
「涙の味する」
「……」
驚いて声が出ない、というのはこの事かもしれない。
そう、まさにあの時、あたしは驚いて声が出なかった。