君の、瞳に。【短編】
「…あたし何も知らないから…もう、会えない…」
だって、下の名前しか知らなくて。
この近くには住んでるらしいけど……
みよじも知らないし。
住所も知らないし。
年齢も知らない。
学校も知らない。
…きっと、もう会えない。
「…っ会いたいのに」
「…かえ……」
“会えない”そう思った瞬間。
涙が込み上げてきた。
「…っ」
まるで、雨の様に。
あたしの目から雫が流れる。
ねぇ…、あっくん。
あなたは今、何をしていますか?
何を見ていますか?
少しはあたしのことを……思い出したりしていますか?