【十の瞳】
「ちち、違いますぅ……!
僕が見た時にはもう、壊れていてですね……!」
「ファニー!」
昂った彼を、無理矢理引き剥がす。
騒ぎを聞き付けて戻ってきたえどがぁさんも、ラジオが壊されていたという報を受けると、露骨に愕然となった。
動揺を、隠そうともしなかった。
「……人を殺したり、電話線を切ったりするような奴だ……ラジオだって、壊すさ」
でも、たった一台切りのラジオだった。
しかし、アンテナをもぎ取られたラジオは、二度と電波を拾う事はないだろう。
ただ、ショックでいつまでも止まっているわけにもいかず、各々の作業は再開された。
応接室には、続々と物が集まってくる。
他の部屋にあったソファーや椅子が手当たり次第に運び込まれ、壁伝いに置かれる。
その上に、シーツや薄掛けが重ねられ、即席のベッドになった。