【十の瞳】



もちろん、八野が席を立った後、その断末魔が聞こえるまで応接室を出た者はいない。
 

そして、コロも十二愛と同じ部屋にいた。
 

仮に、八野が二階へ上がる理由があったとして、なぜ彼女は階段から落ちたのだろうか。


足を滑らせただけだろうか。
 

どうして包丁がここにあるのだろうか。
 

そして包丁は、いつ誰が持ち去ったものなのか。
 

あるいは、八野が一人で行ったことだろうか。
 

だが、こんなにも不自然な自殺があるだろうか。
 

誰も答えを口にしないまま、時間だけが過ぎた。
 



白々と夜が明けた。



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